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M-1グランプリ2025感想と考察featたくろう、ドンデコルテとエバースも少し

年末、たまたま「M1-グランプリ2025」(2025.12.21OA)を見ました。

結果、たくろうに軽く沼ってしまい、重ねて「M1-グランプリ2025アナザーストーリー」(2025.12.28OA)を追いかけたところどうにも堪えられなくなり、今回はM-1で1記事書くことにしました。

決勝ネタ2本を中心にたくろう関係で8〜9割を占めていますが、ドンデコルテエバースにも触れつつ大会を振り返ってみます。

 

 

※当記事は「M1-グランプリ2025」のネタバレを大いに含みます

 

※「M1-グランプリ2025アナザーストーリー」と「優勝後記者会見」で紹介された内容も含みます

 

 

 CONTENTS

 

 

たくろうのネタの面白さ


公式動画で「ジャイアントキリング」と称されたたくろう(ボケの赤木裕さん・ツッコミのきむらバンドさん)のお二人。本大会においてはダークホースだったかもしれませんが、決勝1stラウンド上位3組による最終決戦では9人いる審査員から8票を獲得し、圧勝の形で優勝をかっさらっていきました。


ファーストラウンドのネタはリングアナ。きむらさんが二人でリングアナをやってみたいと言い出し赤木さんを巻き込みます。

最終決戦のネタはビバリーヒルズ。きむらさんがいつかアメリカのビバリーヒルズに住みたいから練習したいと赤木さんを巻き込みます。


いずれもオーソドックスなボケとツッコミというより、きむらさんの無茶ぶりに赤木さんがうろたえながら応えていく形式でした。

赤木さんの返しは大喜利回答的なんですが、それに留まらない発展が隠れていて、意表を突く笑いを生んでいたと思います。審査員・フットボールアワー後藤さんの言葉を借りれば「ただの大喜利を結局やってないというか、赤木の人間性で笑ってる笑わされるっていうのがすごい」。


ここの赤木さんの凄さ。ネットでもその「演技力」を讃えるコメントを拝見しましたし、審査員・博多大吉さんも「漫才なんで、もちろん練習もされていると思いますけどそれを全く見せない。その場でやってる感じが出てるのは本当にすごい技術だなと思いました」と絶賛されていました。

彼の立ち居振る舞い、個人的には「演技」を超えた「説得力」を感じました。本当に困ってどうにか言葉を捻り出している、なんとかきむらさんに合わせようとしている、その状況を違和感なく体現している感じ。

 

おそらく間の取り方作り方が絶妙なのではないでしょうか。食い気味でもいけない、出遅れてもいけない。強すぎても弱すぎてもよくない。その発し方の当たり判定がことごとくスマッシュヒットしている印象。

きむらさんの蒔いた設定はへんてこりんなのに、だから二人の会話にリアリティーが湧く。いつの間にか我々観客サイドは、赤木さんの「苦し紛れ」をわくわくしながら待つ格好になっていたように思います。そして、追い込まれた赤木さんがこちらの期待値を超えてくる。次を欲する客。このループで、赤木無双とも言える怒涛のゾーンができあがっていたように感じます。

 

 

赤木さんの説得力の根源


引っ込み思案。アナザーストーリーにて、赤木さんのお父様が赤木さんを一言で評した言葉です。お父様だけでなくお母様からもそれを裏付けるエピソードが紹介されましたが、赤木さんは思っていることをあんまり口に出さない(出せない?)人だったようなんですね。

元より思想を発言に直結できる人にはわかりにくいかもしれませんが、世の中にはそういう性質の人間もいるのです。今はだいぶマシになったものの、私もどちらかというとそっち側でした。


まわりが何か話している。場合によってはこちらに何か言ってくる。反射よく気の利いたことなんて言えなくても、何か答えなくてはいけない。人生はそんなことの繰り返しです。場合によってはいちいちがちょっとした地獄です。


今回の無茶振りに晒されまくるネタ。その赤木さんの本質が遺憾なく発揮されているように感じました。いや、この表現には語弊があるかもしれません。元来、精神的窮地に置かれること自体が遺憾なはずですから笑


もちろんコンビとしてすべて計算しシナリオを組んでいるわけですが、あの掛け合いをやった時の「ハマり具合」はこれ、日常的に「追い込まれ」を経験していた人間のリアリティに勝るものはないと思います。

コミュニケーションにおいては弱点にしか見えないものを、お笑いのステージで強みに変えた。そう捉えることもできるのではないでしょうか。

 

 

リングアナネタの個人的ツボ部分を語りたい


要素の順番。三文字の初手・WHOを聞いたとき、私は実の所そのボケいるかなあって思ったんですね。あーこれ世界保健機関だなあってオチ的なものがわかっちゃったので。それなのに、赤木さんの「世界保健機関」の言い方だけでちょっと面白かったんですよ。語尾に「会長」が付いたのもジャブ的にじわりましたし。

言う内容の予測が立つと面白くなくなりそうなものなのに、そうはならなかった。これは前述した赤木さんの演技力≒お笑い力によるものと思われます。


加えて、ここからが真骨頂。


PCR、BBQ、とただの略称ではない形のボケネタが続くことで、最初のWHOが続きのボケの展開を予測させにくくする「てこ」として機能していたのだ、と後付けでわかるのです。そう、WHOはベタな3文字大喜利に留まらない仕掛けの伏線でもあったわけです。そのボケいるかなあは撤回せざるを得ません。きっと置かれるべくして置かれてるんです。


(ネタを作っている)赤木さん、天才では?


のちにアナザーストーリーで紹介されていましたが、赤木さんのネタ作りってノートに単語をいっぱい書いてそこから思いつく形で構築されるんですって。どんな単語があのネタの発想をこじ開けたんだろうと思うとわくわくします。

結成2年目でM-1準決勝進出した後、何年もそれを超える成果が出なかったというお二人。そうしてノートに「可能性」が書きつけられていく中で、今年「リングアナっていうむっちゃ可能性あるネタが出てきてちょっと息吹き返した」のだそう。

優勝後の記者会見にて、きむらバンドさんはその停滞期間を「優勝させていただいているからこそ言えますけど、要る7年だった」と率直に表現されていました。リングアナのゴング前の叫びは、そのままたくろう二人の心の叫びが投影されていたのかもしれません。


ネタは最後まで二人がかりのリングアナぶりが弾け続け、「高得点」を叩き出します。

審査員の皆様の配点は以下の通り(番組の表示を参考に敬称略)


博多大吉96

ミルクボーイ駒場97

ナイツ塙96

かまいたち山内92

フットボールアワー後藤95

笑い飯哲夫94

アンタッチャブル柴田97

海原ともこ97

中川家礼二97


こうして合計861点を獲得したたくろうは実力派のヤーレンズを敗退に追いやり、暫定BOX入り。勝ち残っての最終決戦行きを果たすのです。

特にKSDは予測不能すぎましたし、元言葉の醸し出すえも言われぬ雰囲気が突き上げアナウンスにノリすぎて笑わずにはいられませんでした。

 

 

ミルクボーイ駒場さんの評論と垣間見える芸人達の人生


ネタの後、司会の今田耕司さんが何人かの審査員さんに評価をたずねる流れがあります。リングアナについて、中でもなるほどなあと感銘を受けてしまったミルクボーイ駒場さんのコメントについてまとめてみました。およその主旨はこんな感じだと思います。


・赤木さんの挙動不審キャラに意味(きむらバンドさんの変な誘いに乗らされて挙動不審になる流れ)が伴い、言葉が面白いばかりでなく立場も仕上がった


・最初に準決勝に行った後七年とか苦労が続いたがネタ作りを続けてきたのが結実した


これらの視点。演者の個性も野放しにするだけではせっかくの質を損なってしまう。設定に根拠が通えば面白さが格上げされ、漫才世界の完成度が上がるのだ。彼らはそれを体現できるだけの苦労と努力を重ねてきたのだ。というふうに受け止めてみました。


駒場さん、二人の苦労にも寄り添いながら懸命にお話ししておられました。後になってからたくろうにも解散危機があったとわかり、私はこのときの駒場さんに時間差でグッときてしまいましたよ。


さて今大会、苦労というテーマが出たらドンデコルテの渡辺銀次さんに触れないわけにはいきません。


「渡辺銀次40歳独身。厚生労働省の定めた基準によると貧困層に属します。国も認める低所得、私はこんな自分と向き合うのが怖いんです」


これをステージで笑いにするのは相当な覚悟が必要かと存じます。それでもこの道を行くのだという、ヒリヒリするような生き様。

私は最初に見た時に思わずピース・又吉直樹先生の「火花」を思い出してしまいました。お笑い芸人の物語で芥川賞受賞作として名を馳せ、ドラマや映画にもなりましたね。

渡辺さんはコンビを何度か変えながらくすぶり続け、今の相方・小橋さんの希望でツッコミ→ボケに転向したといいます。


渡辺さん、アナザーストーリーにて一度だけ涙を流すのですが、自分の大変な苦労部分ではなくて後輩を食事に誘うこともできないという話で泣くんですよ。ゆにばーす・川瀬名人さんの名前を挙げて。


ドンデコルテは3位でM-1最終決戦に進み、最終的にかまいたち山内さんからの1票を得て2位着地となりました。山内さんは1本目でもたくろう(92点)より高い95点をつけており、オリジナリティーという言葉を用いてドンデコルテを高く評価していました。

そして大会後、渡辺さんは「年明けちょっとメシ行こう」って川瀬さんを誘うんです。泣く。

 

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ビバリーヒルズネタの個人的ツボ部分を語りたい


「それ吹き替え版のやつだから」ってごにょごにょ言いながら「あー言ってたかもね」ときむらバンドさんに押し負ける赤木さんの完璧な吹替セリフ運び。早くもここらへんから赤木無双の空気感が場を掌握した感がありました。

マイアミは出張先なので「マイアミにお留守番」は文脈から言い間違いと思われるのですが、手振り付きのいかにもな翻訳ワードぶりに客側が押し切られる格好になっちゃったのもすごい。


リングアナの方でも出ている表現なのですが、赤木さんって躊躇や狼狽、困惑なんかをおずおず押し出す感じでこちらの笑いを誘ってくるんですね。

それもYahoo!やよい軒みたいな決め所ばかりではなくて、ピーンポーン後の「あ、連絡は入れてくれたのか?」などに見られる揺さぶりと言うか小突きネタみたいな追撃には客側も隙を突かれてしまうなあと思います。

これ、手前で提示されていた赤木さんのナンシー側への遠慮がぶり返される構造になっており、短いスパンで思い出し笑いをも引きずり出す見事なピンポイントフレーズでした。

ホームパーティーに行った後のシーンは圧巻。セレブたちとの対比ギャップもあって、存在のありふれた平凡さがジョージを常時鮮やかに彩っておりました←

思えばロブスターのくだり、「何を言われた?」でちゃんと笑わすのも結構難易度高いと思うんですけど、赤木さんの空間把握能力?あの間合いはちょっと説明しがたい領域の職人芸だったのではないでしょうか。

 

 

つかみの自己紹介とたくろう二人の関係性


彼らの漫才では最初に自己紹介が用意されていました。いわゆるつかみというやつですかね。

書き起こしてみるとこんな感じです。


「メガネのパーマ、きむらバンドと」

「裸眼のバケモノ、赤木です」


「元バンドマンのきむらバンドと」

「元サイコパスの赤木です」


きむらさんの平易で簡潔な自己紹介に、赤木さんがなんとか系統を揃えて付いていくような形になっています。

つまり、入りの挨拶から漫才本編の二人の有り様が表現されているんですよ。きむらさんの振りに合わせようとして変な感じになる赤木さん、という構図です。


文字だと伝わりにくいのですが、実際にお二人が喋っているのを見ればもっと面白いですよ。蛇足かもしれませんが念の為。

本来赤木さんのほうの一言はきむらさん縛りとかはなかったりもう少し自由っぽいんですがね、M-1決勝においては体裁が整っていたもよう。

 


(小声)公式様、つかみ集の動画拝見しました。爆笑必死はある意味間違ってないですが、爆笑必至……あ、敢えてですかね……

 


ここへきて、きむらバンドさんに注目してみます。


今回の漫才中における彼の役割は、赤木さんへ妙な振りをブレずに仕掛け続けることでした。でもこれって、日常に置き換えて考えるとまあまあ迷惑行為と言いますか……行き過ぎて客から見た受け手側の心象がネガティブに寄りすぎてはお笑いにならないかもという、バランスの求められる様式ではないでしょうか。


まあ、漫才というのは妙なフリのような一風変わった土台から組み上がったりするものでもありますがね。

たとえば今回で言うと、エバースの1本目なんかはルンバとうまい棒が織りなす無茶な前提条件のネタでしたが、佐々木さんのボケに町田さんがきっちり突っ込んで成立させていらっしゃいました。

喋りはあたかもストレートパンチを打ち合うようなやり合いで、どちらも相手に対して負けていない・パワーバランスの偏りがほとんどないように思えました。さすがです。

 

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2026.2.14追記

その後エバースさんについて、賞金は19対1とか合コンがどうとか、そういう話が耳に入ってきてしまいました。その上で漫才を見てみると、たしかに舞台上の二人は対等に渡り合っているのですが、そういえば町田さんはだいたい不遇の目に遭っているなあというネタの基本構造に気づいてしまい、妙なところでコンビの物語性が深まってしまったような気がしております……。

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ではたくろうはというと。


今回のネタではきむらさんが赤木さんを追い込む形なので、一見きむらさんの方が上の立場に見えるかもしれません。

が、困惑満載の赤木さんの返しには「どうにかして付いて行くよ」というきむらさんを立てようとする気配があり、ちょっと強引だけどこいつといるの嫌いじゃないんだよな感が漂って見える気がするのです。きむらさんの無茶ぶりには「もちろん付き合ってくれるよね?」という仲良しすぎる友達への絶対的な信頼みたいな空気があって、赤木さんはちゃんとそれを受け止めて返しているというか。なんなら吸収しちゃっているというか。

漫才の中の演目上の話ですよ。


だから心象ネガティブにはならないんですよね。なんだかんだじゃれあってるダチ同士的な健全な関係性に見えてくる。実際、お二人とも仲良しっぽい印象ですし。

 

こういうコンビ間のネタ中における関係性ってお笑いにおける個性の土台かもしれません。

 

ネタ後の審査結果が一つずつ開く所、きむらさんが赤木さんの肩から腕のあたりを「やったな!すごいな!」的に揺さぶっていたのとか、距離感の近さが出ていたように思います。優勝が決まったときは一瞬抱きついてたし。

 

そういえばいつものあの衣装、赤木さんのシャツはきむらさんが誕生日に買ってあげたもの(塚本の商店街で77%OFFで買ったやつ)で、もう十年ぐらい使っているらしいです。

アナザーストーリーからの抜粋ですが、正に読んで字の如く。お笑いスタンスでも感動スタンスでも受け取れてしまう、コンビにとって強めのエピソードストーリーでした。

 

 

優勝フラグを揺るがす要素?2本目をめぐる裏話


ビバヒルネタで爆笑を巻き起こし優勝した後にあって、記者会見で明かされていた2本目のネタ選びの話が興味深かったのでご紹介。

 

今回のM-1はリングアナのネタでほぼきたというお二人。2本目をどうするか考えたとき、赤木さんの同期の翠星チークダンス・木佐さんから「過去にやった強いちゃんと実績のあるネタをしたほうがいい」と言われ、2024年の準々決勝でやった競馬のネタにしようかと思ったこともあったそうです。

でも絶対11月にやったビバリーヒルズのほうがいいよという話になったそうで、「相方を信じて良かったです」とお二人が口を揃えておっしゃってたのがなんというか尊かったです。

 

 


「もとより優勝候補」「隙もない」「おもろすぎる」「かっこよさもある」

今大会最高の870点を出したエバースについて、アナザーストーリーでそんなふうに明かしていたたくろうのお二人。

赤木さん曰く「あんなすごいもの見せられたらって感覚あったんで、僕らやれることやりましょって切り替えられた」とのことでした。

エバースはエバースで、2024年大会では1点差で最終決戦を逃すという苦渋を味わっており、今年に賭ける想いもひとしおだったはずです。

 

そして、決着。

 

コンビ紹介のVTRで軟弱の星と称されたたくろうの逆転劇は実に鮮烈でした。

優勝が決まって銀ピカの紙吹雪がパーン!って舞った時、驚いて「うわぁっ」って感じでおののいてたのも彼ららしさだったのかもしれません。

 

 

 

その後、紅白歌合戦だの何だのすごい勢いで露出が増えたたくろう。ちらっとバラエティの大喜利の様子を拝見したところこちらも面白かったので、これからの活躍にも期待します。

個人的には、赤木さんが1周だけバイキング!!に出たら冷奴や蕎麦をとるのか気になるので、関係各位様ご検討のほどお願いします笑

 

 

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